「紺屋の白袴」的状況を別としても、この雨漏り修理をした家の設計には時間がかかった。
これは自邸だからとくに凝ったということではない。
細部の納まりなどは、自分の家だからこそかえって気楽に処理しています。
それでも時間がかかったのは、条件で外形が厳しく制約されているからだ。
私は通常、部分を寄せ集め、その集まりを調整しているうちに、全体の形が整ってくるような手法で設計を進めるのだが、この家の場合は、決まった外枠の中を「いかに仕切るか」を考えるしかない。
もっともこれは難しいクイズを解くようなもので、しかも妻の催促をやり過ごしさえすれば締切は厳しくないから、あれこれとスケッチを繰り返すのを楽しんだことも確かです。
私は、へミングウェイの言葉を引きつつ、住まいを時間の海に浮かぶ船にたとえたが、実は私の家はそうした比喩に加えて、細長い形態も船を思わせることが、ひそかに気に入っているのだ。